診察の会話を文字起こしするとき、患者さんには、何のために録音するのか、録音した内容をどう扱うのかを伝えます。医療機関側が録音する際の説明文と院内掲示の例を紹介します。録音を始める前に保存先や削除時期を確認し、説明する職員が患者さんの質問にその場で答えられるようにしておきます。
01録音を始める前の声かけ
まず、録音の目的を診療の言葉で説明します。「AIを使います」だけでは、診断をAIに任せるのか、会話を記録するのかが伝わりません。文字起こしに使う場合には、会話を文字にし、担当者が確認して記録を作ることを伝えます。
診察室での説明例
診療内容を記録にまとめるため、会話を録音して文字にします。記録は担当者が確認します。録音してもよろしいですか。希望されない場合も、通常どおり診療します。
この例は、録音を断られたときも通常の方法で診療・記録を続けられる運用を前提としています。返事を待ち、了解を得てから録音を開始します。掲示を読んだか分からないまま、あるいは患者さんが黙っていることを理由に、録音を始める手順にはしません。
診療情報の利用目的や外部への取扱いについては、個人情報保護委員会・厚生労働省のガイダンスに沿った整理も必要です。ここで示す声かけは、法的な同意の要否を一律に決めるものではなく、患者さんの意向を確かめるための院内運用例です。[1]
02院内掲示・配布用の案内文
案内文には、患者さんが知りたい内容を一つの場所にまとめます。特に、外部サービスを使う場合の処理先、音声の保存期間、AIの学習への利用は、提供元に確かめた内容を記載します。外部保存に関する説明は、安全管理ガイドラインにも示されています。[2]
自院の運用に合わせて記入する案内文
診察時の音声記録について
当院では、診療内容を記録する作業を補助するため、診察中の会話を録音し、文字起こしを行うことがあります。作成した文章は担当者が確認します。
使用するサービス:[サービス名・提供事業者名]
音声・文章を処理する場所と外部委託の範囲:[確認した内容]
音声の保存期間と削除方法:[確認した内容]
AIの学習への利用:[利用の有無・条件]
録音を希望されない方は、診察前または診察中に職員へお申し出ください。録音しない場合も、通常どおり診療します。ご不明な点は[担当窓口]へお尋ねください。
「音声を保存しません」と書くなら、提供元の処理環境だけでなく、スマートフォン内にも残らないかを確かめます。学習への利用を停止する設定がある場合は、院内で設定を揃えたうえで説明文に反映します。
03よく尋ねられることへの答え方
保存期間と削除のタイミングは、利用開始前に提供元の仕様と院内の運用を照合し、説明する職員全員で共有します。端末内とサービス側で消える時期が異なる場合は、それぞれを説明できるようにします。
| 患者さんの質問 | 説明の組み立て方 |
|---|---|
| 誰が聞くのですか | 院内で閲覧できる担当者の範囲と、外部事業者の関与を説明します。外部の処理を使うのに「院内だけです」とは答えません。 |
| 声はいつ消えるのですか | 「録音した音声は[院内で決め、サービスの仕様と照合した時点・期間]に削除します。音声をもとに作成し、担当者が確認した診療記録は、別に保存します」と答えます。端末やサービス側のバックアップに残る期間も、確認済みの内容に沿って説明します。 |
| 断っても大丈夫ですか | 録音せずに診療することを伝え、機器の録音が停止していることを確かめます。理由の説明を求めて説得する対応は避けます。 |
| 家族の声も入りますか | 同席者の発言も収録されることを説明します。途中で同席する方が加わる場合も、録音中であることを伝えます。 |
[ ]には、実際に確認した削除時期を入れます。上の例文は職員が応対を揃えるためのひな型です。患者さんに説明するときは、具体的な時点や期間を伝えます。
京都済生会病院は、音声記録について患者向けに説明し、拒否しても診療上の不利益が生じない旨を公表しています。参考になるのは、利用目的だけでなく、希望しない場合の申出先も示している点です。同院の同意の取り方を、そのまま別の施設やサービスに適用できるという意味ではありません。[3]
04職員間で揃えておく対応
説明の担当者、録音を始める人、患者さんの意向を記録する場所を決めます。例えば、診察担当者が開始前に説明し、録音の可否を院内で定めた欄へ記載する方法があります。再診時に希望が変わった場合も、その場で更新できる形にします。
途中で中止を求められた場合は、まず録音を止めます。すでに取得した音声や文章の扱いは、事前に定めた削除の可否と手順に沿って案内します。「今までの記録もすべて消せます」と即答しないことも、職員間で共有しておきたい点です。
説明文を整える際は、音声データは個人情報?診察の録音の保存期間と安全管理で決めた期間や手順と照合すると、掲示と実際の運用の食い違いを防げます。
05まとめ
診察室では、録音の目的と確認者を短く伝え、患者さんの了解を確かめます。保存先や学習利用などの詳細は、提供元への確認を済ませた案内文で補います。説明文と一緒に、録音を希望しない方への対応まで決めておくと、職員が迷わず応対できます。
06よくある質問
録音のたびに、署名入りの同意書が必要ですか。
すべての録音に同じ書面が必要だと一律には判断できません。利用目的や外部提供・委託の実態を踏まえ、必要な説明と同意の方法を院内で定めます。口頭で確認する運用なら、確認した事実をどこに残すかも決めておきます。
患者さんが途中から録音を希望しなくなったらどうしますか。
録音を停止し、通常の診療を続けます。停止前に取得したデータについては、音声と確定済みの診療記録を分け、削除の可否や手続きを担当窓口から案内します。
会話を録音する前に相手へ説明して許可を得て、院内の情報管理ルールに沿って利用してください。文字起こしやAIが作成した文章は、担当者が全文を確認して使用します。
