院内でAIやICT製品の導入を検討しているなら、2026年度診療報酬改定の施設基準も確認しておきたいところです。医師事務作業補助体制加算では、生成AIによる文書作成支援などを組織的に活用する医療機関について、補助者の配置人数の数え方が変わりました。対象となる製品の機能と、導入後に必要な院内体制を見ていきます。

01医師事務作業補助体制加算の変更点

今回の改定では、所定の条件を満たすと、医師事務作業補助者1人を1.2人または1.3人として配置人数に算入できるようになりました。これは、同加算を届け出る保険医療機関の配置基準に関する取扱いです。製品の購入費や、個々の診療でAIを使用した回数を評価する制度とは区別して確認します。[1]

ICT活用による配置人数の算入方法
算入方法導入する製品と共通条件
1人を1.2人所定の生成AIによる文書作成補助システムを含めて組織的に導入し、日常的な活用、安全管理、職員研修等の条件を満たす。
1人を1.3人1.2人の要件に加え、医療文書用の音声入力、RPA、患者向け説明動画のうち、通知に定めるものを少なくとも1種類以上、広く活用する。

まず確認したいのは、必須とされる文書作成補助システムの範囲です。AIを使っているという製品説明だけで判断せず、退院時要約や診断書、紹介状などの原案を作成する機能と、院内での利用方法を照合します。

02対象となる医療向けAI・ICT製品

施設基準通知には、次の4種類が挙げられています。生成AIによる文書作成補助が必須で、残る3種類は1.3人の算入に関わる追加の選択肢です。[1]

通知で示された機能の範囲
製品の種類対象となる機能・内容
生成AIによる文書作成補助退院時要約、診断書、紹介状等の原案を自動作成し、文書作成業務を大幅に効率化するシステム。
医療文書用の音声入力診療録、退院時要約、診断書、紹介状の作成に対応する入力システム。汎用の音声入力機能は対象から除外。
RPA救急医療情報システム等への医療データの定型入力などを自動化する仕組み。
患者向け説明動画入退院、検査・処置、麻酔・鎮静、手術、インフォームド・コンセント、医療安全・感染対策等に関する10種類以上の動画。

例えば、文書作成補助システムとRPAを導入する組合せも考えられます。どの製品を加えるかは、文書の原案作成、定型入力、患者説明のうち、自院で負担を減らしたい業務に合わせて検討できます。音声入力の導入は、その中の一つです。

製品を比較するときは、通知の要件に対応する機能が、契約するプランに含まれるかを提供元へ確認します。文書作成支援と音声入力を一つの製品が備えている場合も、どの機能を、どの要件に対応させるのか整理しておくと、院内で検討しやすくなります。

03日常的な活用と安全管理・研修

導入後には、院内の大半の医師と医師事務作業補助者が日常的に活用し、業務の効率化が顕著に図られていることが求められます。一部の職員だけが試用している段階なら、利用対象と運用を広げた後の状態を確かめる必要があります。[1]

この利用状況について、厚生労働省の疑義解釈では、文書作成補助と音声入力は、医師または医師事務作業補助者の過半数が少なくとも毎週使用することとされています。RPAは補助者が行える業務のうち5業務以上に活用し、毎年追加することが条件です。[3]

患者向け説明動画は、少なくとも3領域で合計10種類以上を用意します。1日の使用回数は、外来での使用も含め、一般病床数の概ね15%以上、療養病床・精神病床では5%以上が目安とされています。製品の機能だけでなく、導入後にどれだけ使うかまで見込んで選びます。[3]

電子カルテなどの医療情報システムと連動して医療情報を扱う製品には、医療機関向けと提供事業者向けの安全管理ガイドラインへの準拠が求められます。AIを使う製品については、AI事業者ガイドラインに基づくリスク対策等を講じる事業者が提供することも条件です。

さらに、配置されるすべての医師事務作業補助者に、機器の操作と生成AIの適切な利用に関する研修を実施し、全員が常時その機器を使って業務を行える体制を整えます。利用できる職員数やライセンスの割り当ても、契約前に検討しておきたい点です。

研修では生成AIの特徴やリスク、対策を扱い、年1回程度の定期開催に加えて必要時にも開催します。補助者と利用する医師等の受講、開催・受講日時、出席者、研修項目の記録についても、疑義解釈で示されています。[3]

04届出前の算定実績と導入後の評価

この算入方法で新たに届け出る場合には、直近3か月以上、特例の算入方法を使わずに、届け出る配置区分と同じか、それを上回る区分を引き続き算定していることが条件です。1.2人と1.3人の算入方法を相互に変更する場合は、この規定の対象から除かれています。[1]

導入後には、補助者の業務内容や業務時間、医師の事務作業時間や負担感などについて、年1回程度の評価を行います。結果は衛生委員会等で確認し、必要な対策を講じます。

院内で評価する際は、製品ごとに対象業務を決めると比較しやすくなります。文書作成支援なら原案作成と修正、RPAなら入力と例外処理、説明動画なら視聴案内と追加説明まで含めて、導入前後の作業を記録します。これは評価方法の例であり、通知が特定の測定様式を指定しているという意味ではありません。

届出の準備で揃える資料

医事部門は配置区分と直近の算定実績を、運用責任者は利用部署と職員、研修、業務評価の資料を確認します。製品の仕様や契約プラン、安全管理の資料は、情報管理担当者と提供元で照合します。

届出時には、厚生労働省の改定資料に掲載された最新の施設基準通知と疑義解釈、提出先の地方厚生局が案内する様式を確認してください。[2]

05まとめ

2026年度改定では、生成AIによる文書作成支援を中心に、医療向けICT製品の活用を医師事務作業補助者の配置人数に反映する仕組みが設けられました。対象製品の機能に加え、日常的な利用、安全管理、研修、算定実績、導入後の評価までが検討範囲です。まずは自院が届け出る区分と、負担を減らしたい業務を照らし合わせてみてください。

06よくある質問

AI製品を導入すれば、すべての医療機関で加算を算定できますか。

製品の導入だけでは算定できません。医師事務作業補助体制加算自体の施設基準を満たしたうえで、今回のICT活用に関する条件を満たす必要があります。

1.3人の算入には、4種類の製品すべてが必要ですか。

生成AIによる文書作成補助システムが必須です。それに加え、通知の条件に合う医療文書用音声入力、RPA、患者向け説明動画の少なくとも1種類以上を広く活用し、共通要件を満たす必要があります。

医療向け製品のうち、診察の会話を文字にするサービスを検討する際は、GENSHI Voiceの機能もご覧いただけます。ここでは製品の選択肢として紹介しており、この加算の施設基準への適合を認定するものではありません。

← コラム一覧に戻る